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日本は遅れていなかった。遅れていたのは棚のほうだった

韓国の流行が日本へ伝わるまでには時間差がある——この前提を検証した。知られるまでの差はほぼ無く、ずれていたのは商品が店頭に並ぶ時期だった。そして並んだとき、韓国での検索量は山の1.4%まで落ちていた。

SEOUL EDIT 編集部11 分で読めます
流行が入れ替わっていくデザートの棚
※ 内容の理解を助けるための説明用イメージです。実際の写真ではありません。

「韓国で流行したものは、時間を置いて日本に伝わる」。韓国の消費トレンドを扱う記事では、ほぼ前提として書かれる一文である。この前提が成り立つかを、2年ぶんの検索データと、日本のコンビニ各社の発売記録で検証した。

結果は、前提の半分を否定した。知られるまでの時間差は1か月で、事実上は同時だった。ずれていたのは商品が店頭に並ぶ時期のほうで、その差は4〜6か月あった。そして並んだ時点で、韓国での検索量は山の1.4%まで落ちていた。

対象:ドバイチョコから続く一連の流行

検証の対象は「두쫀쿠(トゥジョンク)」を中心とする一連の商品群である。「두바이 쫀득 쿠키(ドバイ・もちもち・クッキー)」の略で、韓国のSNS上でこの略称が定着した。マシュマロ状のもちもちした生地で、カダイフ(極細の麺状の生地)とピスタチオクリーム、チョコのフィリングを包んだ菓子で、噛んだときにもちもちからざくざくへ食感が二段で変わる点が特徴とされる。

起点は2024年の「ドバイチョコレート」にある。板チョコの中にカダイフとピスタチオを詰めたもので、韓国ではそこから、包む生地を餅菓子に置き換えた形が派生した。したがって「ドバイチョコの流行」を単一の商品で測ると、実態を取り違えることになる。材料を引き継ぎながら形を変える連鎖として見る必要がある。

韓国国内ではさらに派生が続いた。アーモンドに替えた「아쫀쿠」、イタリア風の「이쫀쿠」。パリバゲット、トゥッサムプレイスといった大手チェーンから、聖水洞や弘大の個人カフェ、さらにはクッパ店や寿司店の品書きにまで広がった。価格帯は1個5,000〜10,000ウォン。カダイフとピスタチオの輸入量と価格が動く規模に達している。

韓国側:山は2026年1月

5つのデザートを同一のリクエストで取得し、同じ物差しに揃えた。月ごとの平均検索量である。

「두쫀쿠」が検索された量(月ごとの平均)
  1. 2025年8月0.8
  2. 2025年9月1.3
  3. 2025年10月2.1
  4. 2025年11月6.0
  5. 2025年12月30.0
  6. 2026年1月64.6
  7. 2026年2月18.9
  8. 2026年3月5.1
  9. 2026年4月2.0
  10. 2026年6月0.9
  11. 2026年9月0.7

2025年7月まではほぼ0。立ち上がりから山まで6か月、山から元の水準に戻るまで4か月。

半年で立ち上がり、4か月で落ちきっている。2026年9月時点では0.7で、山の1.1%にあたる。語としては残っているが、検索される対象ではなくなった。

この規模は、同じ物差しに他のデザートを並べると明確になる。

5つのデザート、それぞれの山の高さ同じ物差しで比較
  1. 두쫀쿠(2026年1月)64.6
  2. 두바이 초콜릿(2024年9月)5.9
  3. 왁뿌볼(2026年6月)3.4
  4. 소금빵(2025年9月)1.0
  5. 탕후루(2024年9月)0.7

この2年での最大値。탕후루 と 두바이 초콜릿 は、本来の山がこの期間より前にある。

두쫀쿠 が突出している。今年6月に日本語圏でも紹介された 왁뿌볼 の19倍にあたる。탕후루 はこの2年を通じて0.7前後で推移しており、流行としてはすでに終息している。「韓国で流行しているデザート」として同列に扱われることが多いが、規模には大きな開きがある。

소금빵(塩パン)だけは山を作らず1.0前後を維持している。これは流行ではなく、定着した商品の形である。

日本側:認知の時間差は1か月

次に、日本でいつ知られたかを測った。動画の投稿本数を月ごとに数え、韓国語と日本語で山の位置を比較する。本数そのものは概算値のため読めるのは山の位置だけだが、時間差の検証には足りる。

ドバイチョコ関連の動画、山の位置各国ごとに最大を100とした
  1. 韓国 2025年12月100
  2. 日本 2026年1月100

国どうしで高さは比較できない。比べているのは山が来た月のみ。日本は1か月あと。

1か月差。事実上は同時と言える。SNS上で流通する情報については、国境はすでに大きな障害になっていない。「時間を置いて伝わる」という前提は、少なくとも認知の面では成立していなかった。

ところが、店頭に並んだのは4〜6か月後

日本のコンビニにこの系統の商品が並んだ日を、各社の告知と報道から拾って時系列に並べる。

  1. 2026年2月24日 — ファミリーマート限定「ロッテ ドバイスタイルチョコレートバー」288円。板チョコではなくアイスバー
  2. 2026年4月10日 — ナチュラルローソン「ドバイスタイルもちもちクッキー チョコ」702円。マシュマロ生地でカダイフとピスタチオを包んだ、두쫀쿠 と同じ形
  3. 2026年4月21日 — セブン-イレブン「ドバイチョコもち」
  4. 2026年6月9日 — セブン-イレブン「ドバイチョンドゥククッキー チョコ味」537円。韓国「KOKO」の商品で、名称は「두쫀쿠」の音訳
  5. 2026年7月21日 — 大手3社が「ドバイチョコ風サンド」などを相次いで投入

韓国での山は2026年1月。最初の商品が並んだ2月24日の時点で、韓国の検索量はすでに山の29%まで落ちている。4月には3%、6月には1.4%となる。

日本の店頭に並んだ日、韓国側の検索量山(2026年1月)を100とした
  1. 2月 ファミマ(アイスバー)29
  2. 4月 ローソン(もちもちクッキー)3
  3. 6月 セブン(두쫀쿠そのもの)1.4
  4. 7月 大手3社(サンド)1.1

日本の店頭が追いついた時点で、韓国側は山の1%台まで落ちていた。

6月9日の商品は、この構造を端的に示している。「ドバイチョンドゥククッキー」——韓国語の「두쫀쿠」をそのままカタカナに置き換えた名称で、韓国企業の商品として日本のコンビニに並んだ。その日の韓国での検索量は、山の1.4%だった。

認知と流通で、時間差が生まれる理由

動画が国境を越えるのに要する時間と、商品が店頭に並ぶまでに要する時間は、そもそも桁が違う。原料の確保、製造枠の押さえ、パッケージの制作、商談、物流。カダイフとピスタチオのように日本の菓子製造にとって取り扱いの少ない材料であれば、調達の段階でさらに時間がかかる。

加えて、コンビニの新商品は「すでに十分に知られている」ことを確認したうえで決定される。話題になった直後ではなく、話題が定着した後に動く仕組みになっている。認知が同時でも、流通は構造的に遅れる。

問題は、その4〜6か月のあいだに韓国側が次へ移っている点にある。日本の店頭がドバイチョコに追いついた2026年4月、韓国ではすでに 왁뿌볼 が立ち上がっていた(2月0.3 → 6月3.4)。店頭が 두쫀쿠 に追いついた6月には、その 왁뿌볼 が山をつけている。

測定できなかったもの:タンフル

比較対象としてタンフルも測定を試みたが、この2年のデータでは韓国側も日本側も山が現れなかった。韓国での流行は2023年で、今回の観測期間より前に終息していたためである。

初回の測定では「日本が5か月おそい」という値が出た。ただし日本側の山は観測期間の端に位置しており、立ち上がりの区間が含まれていなかった。期間外にある山を、期間の端で代用した形になる。値そのものは計算どおりだが、問いに対する答えにはならないため、この組は測定対象から外した。

この手法で時間差を測れるのは、観測期間の中で「立ち上がり」と「下降」の両方が確認できる対象に限られる。ドバイチョコの系統は、その条件を満たした数少ない例である。

検証の結論

「日本は韓国より遅れている」という表現は、対象を区別していない点で不正確である。今回のデータからは、次のように整理できる。

  • 認知はほぼ同時。SNS上で見る限り、時間差はほとんど無い
  • 購入可能になるのは山から4〜6か月後。原料調達・製造・商談の時間がそのまま反映される
  • その4〜6か月のあいだに、現地では次の商品が立ち上がっている
  • したがって日本のコンビニに並ぶ商品は「現在韓国で流行しているもの」ではなく「韓国で流行が終わったもの」に近い

これは日本側の企画が遅いという評価ではない。店頭に並べるには確実性が求められ、確実性は時間と引き換えにしか得られない。構造上そうなるという話である。

実務上の含意は明快で、コンビニの棚は「最新の韓国」ではなく「4〜6か月前の韓国」として読むべきだ、ということになる。次に来るものを知るには、店頭ではなく、現地でいま立ち上がっている数字を見る必要がある。

なお、その「立ち上がっている側」にいた 왁뿌볼 も、6月に山をつけて下降に入っている(3.4 → 1.2)。次の対象は、まだ名前が定着していない段階にある。

Sources

  • #デザート
  • #두쫀쿠
  • #時差
  • #コンビニ
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