「ダイソーのコスメ」は、もう検索されていない。店は伸びているのに
日本で「韓国のダイソーのコスメがすごい」と紹介されはじめた。韓国側の検索を2年ぶん見にいくと、その山は2025年2月に過ぎていて、いまは4分の1しかない。ただしこれは、飽きられたという意味ではなかった。

「韓国ではいま、ダイソーでコスメを買うのが当たり前になっている」。そういう紹介を日本語でよく見るようになった。本当かどうか、韓国側で「다이소 화장품(ダイソーのコスメ)」がどれくらい検索されているかを2年ぶん取ってみた。伸びていなかった。山は2025年2月で、いまはその4分の1しかない。
ただし、これを「ブームが終わった」と読むと間違える。同じ期間に、ダイソーという店そのものの検索は22%増えていて、売上も伸びている。何が起きているのかを順に見ていく。
まず、韓国のダイソーは日本のダイソーではない
看板もロゴもほとんど同じなので混同されやすいが、資本のうえでは別の会社になっている。2023年12月、日本のダイソー産業が持っていた34.21%の株式を、韓国側の親会社である아성HMP(アソンHMP)が全量買い取った。1997年から続いた合弁が、このとき解消されている。いま韓国で「다이소」と言えば、韓国の会社が韓国で運営している店のことだ。
値段の仕組みも知っておくと、このあとの話が読みやすい。商品はすべて500・1,000・1,500・2,000・3,000・5,000ウォンの6段階のどれかで売られる。この6段階がそろったのは2006年で、上限の5,000ウォン(およそ550円)は20年変わっていない。全体のおよそ半分は1,000ウォンの商品だ。
いつ、雑貨屋がコスメ売り場になったのか
化粧品を本格的に増やしはじめたのは2022年ごろ。2026年1月の時点で、入っているビューティブランドは160社ほど、品目は1,700ほどある。2022年と比べると、ブランド数で23倍、品目数で14倍。ビューティ部門の売上は2024年に前年比144%増、つまり2.4倍になった。
この増え方を支えたのは、大手メーカーが「ダイソー専用の小さいライン」を作りはじめたことだ。VT、ネイチャーリパブリック、ホリカホリカといった名前が並ぶ。5,000ウォンという上限は、内容量を小さくして、箱を簡素にすれば守れる。つまり上限が、専用商品を生む設計として働いた。制約が邪魔をしたのではなく、制約が新しい棚を作ったことになる。
なぜ、これが「ヒップ」なのか
日本の100円ショップの感覚とは、置かれている位置が少しちがう。韓国のダイソーは「安く済ませる場所」ではなく「まず試す場所」になっている。外れても5,000ウォンなので、失敗の代金が小さい。だから試す回数が増え、試した数だけ口コミが出る。
象徴的なのが、商品名ではなく品番で呼び合う文化だ。「1019702、買った?」という言い方が普通に通じる。ブランドが前に出ないぶん、番号がそのまま合言葉になる。高いものほど効く、という順番の逆をいく買い方が、ひとつの遊びとして成立している。
で、いま数字はどうなっているか
まず、買い場そのものがどれだけ検索されているか。季節の影響を外すため、去年の同じ月と今年の同じ月を突き合わせて平均した。
ダイソーだけが、きれいに伸びている。コスメの本丸であるオリーブヤングは1割落ちた。ここまでは、日本で紹介されている話とよく合う。
ところが「ダイソーのコスメ」は、2年前の半分だった
同じ物差しで、店の中の言葉を見にいく。「다이소 화장품」「다이소화장품」「다이소 뷰티」をひとつにまとめて数えた。言い方が変わったせいで減って見える、ということが起きないようにするためだ。
1年半かけて、ずっと下げている。途中の2026年1月に少し戻しているが、これは毎年1月に出る形で、山の回復ではない。
検索は落ちて、売上は伸びている
ここに、この記事の要点がある。同じ時期の消費データの推計では、ダイソーのビューティ商品の年間購入額は前年同期比で約40%増えている。検索は半分になり、買われた金額は増えている。逆を向いている。
検索は「知らないから調べる」行動で、売上は「知っているから買う」行動だ。検索の山は、ものが売れた量の山ではなく、珍しさの山を測っている。だから山が過ぎたということは、飽きられたのではなく、当たり前になったということになる。「ダイソーでコスメを買う」が、わざわざ調べる話ではなくなった。
品番で呼び合う文化も、これを裏づけている。カテゴリ名で調べる必要がなくなった人は、次から番号で直接たどり着く。入り口の言葉が減るのは、中に入った人が増えた印でもある。
では、いま店の中で何が探されているのか
順位そのものより、動き方に差が出ている。ネイルは2024年の夏が12前後だったのに対して、2026年8月は25.9。夏に上がる季節性があるので同じ月どうしで比べると1.10倍で、派手ではないが、確かに位置が上がっている。7月・8月にはコスメを抜いて、店の中で一番になった。
逆をいったのが香水だ。2025年2月から3月にかけて20.1まで跳ねたあと、いまは6.6。1年半で3分の1になっている。コスメ全体が下げるより先に、香水の山が来て、先に過ぎていた。同じ店の中でも、来たものと、来て過ぎたものと、これから来るものが並んでいる。
日本の紹介記事は、いまどこにいるのか
韓国で「ダイソーのコスメ」がいちばん調べられたのは2025年2月。日本語で「韓国のダイソーがすごい」と読むようになったのは、そのあとだ。だいたい1年半ぶん、後ろにいる。
これは遅いという批判ではない。話が伝わる順番が、そもそもそうなっている。ただ、その順番を知っていれば読み方は変わる。いま日本で「韓国で流行っている」と紹介されているものは、現地ではたいてい、流行ではなく定着だ。追いかけるべきは、その隣で静かに上がっている棚のほうになる。
- その言葉が現地で調べられているか(調べられていないなら、まだ言葉になっていないか、もう調べる必要がなくなったかのどちらか)
- 山がいつ来たか(1年以上前なら、それは流行ではなく定着として読む)
- 検索と売上が逆を向いていないか(逆を向いているときは、たいてい「当たり前になった」が起きている)
毎日データを取り直しているのは、この差を捉えるためである。ダイソーの例が示すとおり、「伸びている」と「調べられている」は別々に動きうる。片方だけを見れば、判断を誤る。
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